MEDIA HACK [メディアハック]

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Guardianの名物編集長アラン・ラスブリッジャー、退任へ

Guardianの名物編集長アラン・ラスブリッジャーの退任に際しての、読者への手紙。彼は20年以上にわたって編集長を務めてきて、アメリカやイギリスでは広く名前の知られた存在でした。

最近では、2010年にウィキリークスによってアメリカ外交公電が暴露された事件や、エドワード・スノーデンによってCIAやNSAの文書が流出された事件などで、ガーディアンは世界的な存在感を発揮していますが、その背景にはラスブリッジャーの優れた手腕がありました。

記事では、彼の20年間にわたるGuardianとの歩みも振り返られていますが、デジタルメディアとして試行錯誤を続けてきた過程も振り返られています。Guardianが(時にはNewYorkTimesなどを押しのけて)ネットで存在感を発揮することができた裏に、彼の未来を見通す力があったことも感じさせます。

 

ここからは個人的な感想になりますが、やはりメディアといえば、「もう紙は終わり、これからはウェブで〜」とか「レガシーメディアは旧来のビジネスモデルを〜」という議論が盛んなイメージです。

しかし、Guardianやアラン・ラスブリッジャーの仕事を見ていると、改めて「メディアとは何か?」ということを考えさせられます。 コンテンツか?プラットフォームか?という議論を超えて、彼らは「民主主義とは?」「権力とは?」という問題を出発点に、"メディアのアイデンティティー" を定義しているように思うからです。

どちらが良いという話ではもありませんし、ビジネス的に成り立たなければ元も子もないのですが、やはりビジネスモデルやフォーマットの話は、一過性のものに過ぎないという気がしてしまうのです。

ラスブリッジャーといえば、2013年にスノーデンの暴露を行った際に、英国政府から機密文章のはいったハードディスクを壊すように圧力を受けて、それでも屈しなかった話があります。もちろんウィキリークスの際にも、厳しい圧力を受けていたはずです。

日本でも様々な政治的議論が進む中で、ネットの人々は「マスゴミ」といってメディアを批判することには熱心なのに、新興メディアによってこうした議論に一石を投じようという人がいないのは、個人的には残念です。政府から厳しい圧力を受けても尚、メディアの意義を信じているラスブリッジャーの姿勢は、メディアとは何か?という問いが、ビジネスモデルやフォーマットの話だけにとどまらないことを思い出させてくれます。

自分にとってGuardianは、イラク戦争に激しく反対の論陣を張り始めた2003年から非常に関心のある存在で、つまり10年以上ラスブリッジャーの仕事を眺めていたわけです。そして、新興メディアがこうした意志を継ぐことができているか?ということが、個人的には大きな意味を持っています。

アメリカでは、VoxやThe Interceptらが、少しでもこうした流れをデジタル時代のフォーマットに変化させつつ、継承していこうとしているようです。しかし翻って日本では、まだまだその動きが十分ではないと思っていますし、そうした新興メディアは確実に必要なのだと確信しています。

彼のメッセージを読み、ラスブリッジャーの仕事を振り返りながら、あらためて「メディアとは何か?」という問いを考えてみようと思います。

www.theguardian.com